第104回 自然体の歓喜、求道者の苦悶(後編)

「頭が真っ白になりました」  金メダルの感想を、鈴木桂治はこう述べた。 「長い4年間だったか?」と問うと、「今考えると短かったですね」と答えた。  忘れられないのは4年前のシドニーでのワンシーンだ。鈴木桂治は井上康生の練習パートナーとして同行を許された。

第289回 黒獅子旗に挑む大人たちのドラマ

 都市対抗野球には独特の制度がある。各地区予選で敗退したチームから選手をレンタルできる補強選手制度だ。最大で5人まで借り受けることができる。この制度が存在することでチームは地域色を帯びる。文字どおり「都市の代表」となるわけだ。同一チーム同士の対戦では単なる「企業対抗野球」になってしまう。

第242回 斎藤と岡島が証明した日本の「技術力」

 37歳の斎藤隆(ドジャース)と31歳の岡島秀樹(レッドソックス)がミッドサマー・クラシック――米オールスターメンバーに選出された。  岡島は登板機会に恵まれなかったが、斎藤は1回を三者凡退に封じた。気合が乗っていたのか、MAXは96マイル(約155キロ)を計測した。その投球はとても37歳には見えなかった。

第241回 退路を断って「制球力」を磨かねば明日はない 広島・永川勝浩

 クローザー永川勝浩の1軍登録抹消(12日に再登録)とともに、広島カープのクライマックス・シリーズ出場の可能性も消えてしまったように感じられる。  7月1日の巨人戦、永川は6−4と2点リードの9回表、クローザーとしてマウンドに上がった。ところが、味方のエラーでリズムを崩し、一挙に5点も奪われてしまう。“ガラスの抑え”を象徴するようなシーンだった。

第103回 自然体の歓喜、求道者の苦悶(中編)

「自然体でやりますよ」  アテネに出発する前、鈴木桂治は私にこう言った。相手を過度に意識しない。秘策に頼らない。そのことを自らに言い聞かせて決戦の地に向かった。  24歳がこうした境地に至ったのには理由がある。福岡での敗北が“良薬”の役割を果たした。不必要な“斜眼帯”を取り払ったと言うこともできる。

第287回 高い授業料、いいかげん取り戻せ

 サッカー日本代表監督のイビチャ・オシムはペシミスティックな預言者である。  先頃、上梓した『日本人よ!』(新潮社)という自著のエピローグの部分で、あえてアジア杯について言及し、こう結んでいる。<だから、この言葉だけは、絶対に忘れないでほしい。「終わるまではすべてが起こりうる」。人生はだいたいそうだし、サッカーでは常にそうだ>

第240回 楽天の大健闘を支える“窓際族”の野村信者

 球団創設初年度の勝率は打率程度の2割8分1厘。2年目は3割5分6厘。「パ・リーグのお荷物」と呼ばれていた楽天が今季は大健闘だ。7月1日現在、31勝39敗2分、勝率4割4分3厘で4位西武から3.5ゲーム差の5位。クライマックスシリーズ(3位以内)出場も夢ではない。

第239回 アイランドリーグからカープへの“復活”は!? 香川オリーブガイナーズ・天野浩一

 広島カープは5勝18敗1分の戦績で交流戦最下位に終わった。交流戦開幕前は3位につけていたが、交流戦で13も負け越したことにより、現在(6月28日)は3位と8.5ゲーム差の5位。クライマックスシリーズに出場するためには3位以内を確保しなければならないが、きわめて厳しい状況になってきた。

第238回 桑田のMLB生命線は「レインボール」

 パイレーツの桑田真澄が6月14日(日本時間15日)、ホームでのレンジャーズ戦に登板し、負け試合ながら9回の1イニングを三者凡退に切ってとった。  11球中「レインボール」と名付けたカーブを4球も投げた。カーブは桑田がメジャーリーグで生き残るための生命線だろう。

第284回 前田の2000安打は敗残兵の帰還の譜

 かつて天才の異名をほしいままにしたカープの前田智徳が2000本安打を前にして、もがき苦しんでいる。交流戦20試合の打率は70打数11安打、わずか1割5分7厘。イメージと異なるパ・リーグのピッチャーの球筋に戸惑っているようにも映る。四球数はセ・リーグ打撃30傑中、最少。あれほど選球眼のよかったバッターに、いったい何が起きているのか。

第101回 甦ったワールドリーグ戦<後編>

 第3回ワールドリーグ戦には、カール・クラウザーやミスターXに混じって、もうひとり実力派のアイク・アーキンスも参加していた。当時を知る関係者によるとアーキンスは本物のギャングであり、気心の知れた日本人レスラーには、ハリウッドのトップ女優であるバージニア・メイヨとのツーショット写真を見せびらかしていたという。当時、ギャングでも、ハリウッドの女優と付き合える者は、幹部クラスに限られていた。

第235回 外様ながらチームを引っ張る“努力の人” 巨人・小笠原道大

「オガサワラひとりにやられた」  オリックスのテリー・コリンズ監督はそう言って、唇を噛んだ。  5月28日、交流戦のオリックス戦で自身初となる1試合3本塁打。開幕から巨人の3番に座り、5月30日現在、打率3割3分5厘、14本塁打、36打点――期待にたがわない活躍ぶりだ。

第281回 汚れていた? 「キンシャサの奇跡」

「キンシャサの奇跡」といえばボクシング史上最高の名勝負といっても過言ではない。“象をも倒す”と恐れられた無敗のチャンピオン、ジョージ・フォアマンに数々の伝説を生み出したとはいえ、オールドタイマーのモハメド・アリが挑戦すると聞いた時、誰もが試合後のアリの無惨な姿を思い浮かべたはずだ。

第100回 甦ったワールドリーグ戦<中編>

 さて、リングスに目を移してみよう。<メガバトル>の参加外国人はクリス・ドールマン(オランダ)、ディック・フライ(同前)、ヘルマン・レンティング(同前)、ハンス・ナイマン(同前)、ウィリー・ピータース(同前)、ディミータ・ペトコフ(ブルガリア)、ソテル・ゴチェフ(同前)、アンドレィ・コビィロフ(ロシア)、ヴォルク・ハン(同前)、ウラジミール・クラブチェック(同前)、グロム・ザザ(グルジア)、ゲオルギー・カンダラッキー(同前)の12名。オランダ、ブルガリア、ロシア、グルジアの4カ国からの参加ながら、国際色豊かなトーナメントに見えたのは、これら4カ国には格闘技王国のイメージがあると同時に、プロレスからは疎遠のニュアンスが強く、ために他団体のプロレス会場では味わうことのできないテイストを存分に提示することができたからに違いない。

第233回 Aクラス入りするには“青い目”の相棒が必要だ 広島・新井貴浩

 鯉のぼりの季節とともに、カープも浮上してきた。最大時で8もあった借金も5月17日には完済した。プレーオフ進出の条件となる3位以内も十分、射程の範囲だ。  カープ躍進の立役者が4番・新井貴浩である。現在、14本塁打、36打点。これはセ・リーグでは中日のタイロン・ウッズに次ぐ数字。4月後半には2割5分を切っていた打率も2割8分9厘にまで上昇してきた。

第232回 上原「抑え」転向の本当のメリット

 開幕ダッシュに成功し、最大時で14もあった貯金が終わって見れば借金14の4位。昨季、巨人が坂道を転がり落ちていった背景にはイチにもニにも抑えの弱さがあった。  締めくくり役がしっかりしないことには安定した成績は残せないのだが、巨人は同じ轍を踏んできた。自前で抑えを育てられないから外国人やFA選手に頼らざるをえなかったのだ。

第99回 甦ったワールドリーグ戦<前編>

 リングス初のトーナメント戦である<メガバトルトーナメント>はリングス・オランダのボスであるクリス・ドールマンが子分のディック・レオン・フライをレッグロックで破り初代の覇者となった。ドールマンをして“泣く子も黙る赤鬼”とはよく言ったもので、その武骨な面構えからは、いかにもアムステルダムの夜の暗がりを取りしきる用心棒の元締めの威厳がにじみ出ていた。加えて溶岩が冷却してできたような体付きも、相手を威嚇するには充分だった。

第231回 「3番」の経験が“ポストイチロー”に近づくはず ヤクルト・青木宣親

 スタートダッシュに失敗したチームの中で、この男だけは開幕から絶好調だ。  スワローズ青木宣親のバットから快音が止まらない。4月26日現在、打率3割9厘7厘はダントツのリーグトップ。イチローを超える2回目のシーズン200安打達成へ視界は良好だ。

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