第324回 信頼失う広島・ブラウン監督の不可解采配

 必ずしもセオリーを守る必要はない。また、それをしっかり守ったからと言って目的を果たせる保証はどこにもない。  しかし、大した企みもなくセオリーをいたずらに踏み外した場合、後に生じる副作用はきわめて深刻なものとなる。それは覚悟しておいたほうがいい。カープの指揮官マーティ・ブラウンが日曜日の中日戦で披露した采配は敵地のファンがどよめきをあげるほど不可解なものだった。

巨人・松井秀喜の、“進化する怪物”<前編>

 草野球に、ひとり元プロ野球選手がまじると、たとえホームランを打たなくても、バットの振りの速さやスイングの音だけで彼我の違いが実感できるものだ。  ちょうど今、ジャイアンツの松井秀喜がそんな感じである。彼がバットを振ると、他の選手のスイングの速さや音がアマチュアのそれに見えてしまう。精鋭揃いのプロにあっても、ひとり彼だけは“別格”という印象を受ける。

第276回 「勝負の年」に慌てて手術をするな 東北楽天・長谷部康平

「最下位決定だな」  東北楽天・野村克也監督の落ち込みようといったら尋常ではなかった。  3月2日、長崎での千葉ロッテ戦に先発した大学生・社会人ドラフト1巡目ルーキーで、即戦力サウスポーと評価の高かった長谷部康平にアクシデントが発生した。初回、飛球を追って一塁方向へ走った際に左ひざを痛めてしまったのだ。

第275回 中田翔は清原の二の舞?

 将来を嘱望される右の長距離砲、しかも高卒ルーキーとなれば清原和博(現オリックス)以来だろう。  北海道日本ハムの“怪物ルーキー”中田翔(大阪桐蔭)のバットが注目を集めている。2月10日、阪神との練習試合では推定130メートルの場外ホームランを放った。高校通算87本塁打の実績はダテではなかったということだ。

背番号「3」の再臨<後編>

 26年ぶりの「背番号3」を目の当たりにして、なぜ、少年時代、あれほどまでに長嶋茂雄が好きだったのか、やっと謎が解けた。つまり「背番号3」は躍動の象徴だったのだ。「3」という背番号そのものが美しいのではなく、ミスターの躍動感に魅かれたのであり、もっといえば背番号は3でも5でも6でもよかったのだ。どうやら私たちは、少なくとも私は背番号という味気のない記号を愛したわけではなかったらしい。今にして思えば、それを確認するのに、随分と遠回りをしてしまったような気がする。

第274回 メジャーで史上初の「日本人バッテリー」誕生か 香川オリーブガイナーズ・堂上隼人

 四国アイランドリーグ(今季から四国・九州アイランドリーグ)は昨秋の大学生・社会人ドラフトで三輪正義(香川オリーブガイナーズ−東京ヤクルト)をはじめ、過去最多の6選手をNPB(日本プロ野球組織)に送り出した。  これで同リーグ出身のNPBプレーヤーは11名。NTT西日本やトヨタ自動車などの9名を上回り、社会人の出身母体としてはNPB最大勢力となった。

第320回 サッカー日本代表の「戻るべき場所」

「自分たちには戻るべき場所があった」。ラグビー・トップリーグのMS杯を制したサントリー清宮克幸監督のコメントだ。「流れが悪くなったら、そこに戻るというゲームプラン。まずチャレンジする。うまくいかない。ならば戻ればいい。ラグビーは必然の競技。たまたまDFがズレたというのではなく、相手にとって“どうしようもないな”という状態をつくり出す。それをやり続ける。スクラム、モール、ラインアウト…。全てにおいて我々には“戻るべき場所”があったということです」

第319回 物価高でプロ野球は生き残れるか

 原油価格の高騰によりガソリンは昨年の同時期に比べ16.4%も値上がりした。4月からは輸入小麦の価格が30%引き上げられる。小麦が原料として使われているのはパンや麺だけではない。食品に加えビールなどもいっせいに小売価格に転嫁される。そうなれば、ますます家計は「生活防衛」の色を強め、レジャー関連支出を抑えるようになる。さてプロ野球は大丈夫か? と不安に思うのは私だけではあるまい。

第272回 チーム再建のカギはやはり「マウンド」 埼玉西武・渡辺久信監督

 昨季、埼玉西武ライオンズは26年ぶりのBクラス(5位)に転落した。その再建を任されたのが前2軍監督の渡辺久信だ。  渡辺監督は西武時代、6度の日本一と10度のリーグ優勝を経験している。  投手として1986年(16勝)、88年(15勝)、90年(18勝)と3度、最多勝に輝いている。工藤公康、郭泰源らとともに西武の黄金期を支えた。

背番号「3」の再臨<前編>

 球場へ向かう道は県外からの車であふれていた。渋滞の中には九州各県はもちろん、遠く東北や関東のナンバープレートを付けた車も見受けられた。  2月12日。宮崎キャンプが始まって12日目の土曜日、今日こそ長嶋茂雄が「背番号3」を披露するというウワサがまことしやかに流れていた。  ただ、それだけの話である。

第318回 大場よ、“鉄腕2世”を超えろ

「私の履歴書」といえば日本経済新聞の名物連載だが、川上哲治、西本幸雄、鶴岡一人(故人)、稲尾和久(故人)4氏の自伝を一冊にまとめるにあたり、解説を依頼された。「神様」に「闘将」に「親分」に「鉄腕」――。コピーライターなどいない時代、誰が名付けたか知らないが、どれも名ニックネームである。4氏の人物像が、この2文字に全て凝縮されているといっても過言ではない。

第271回 中田人気の裏側

 キャンプのMVPは北海道日本ハムの大物ルーキー中田翔で決まりだな。  連日のようにスポーツ紙の一面を独占している。  かつてキャンプの時期、スポーツ紙の一面を飾るのは巨人の大物ルーキーと相場が決まっていたが、最近は「巨人のドラフト1巡目ルーキーって誰だっけ?」ってな感じである。  ちなみに高校生ドラフトの1巡目ルーキーは藤村大介(熊本工)、大学生・社会人ドラフトの1巡目ルーキーは村田透(大体大)である。

第317回 「三無主義」に蝕まれている相撲協会

 いつから、こんな詭弁がまかり通るようになったのか。「相撲の世界は各部屋が個人商店、協会が商工会議所のような関係。ひとつの部屋で不祥事が起きたからといって、いちいち理事長が責任を取る必要はない」。元力士やタレントから、しばしばこのような発言を耳にする。本当にそうだろうか。

ラガーマンの決断 ラグビー・村田亙

「オレも、もう少し若かったらなァ……」  人生の大切な局面において決断できなかった理由を、年齢のせいにする人間に仕事のできる者はいない。  日本一のラグビー界においてプロ第一号となり、フランスのラグビーリーグでプレーする村田亙が本場のラグビーを意識するようになったのは、‘91年の第2回ワールドカップ直後のことだった。

第316回 Jリーグにアジア選手枠創設を!

 07年の世界主要企業の時価総額ランキング(野村証券調べ、日本経済新聞1月13日付)を見て驚いた。首位は前年6位の中国石油天然気(ペトロチャイナ)、2位エクソンモービル(米)、3位GE(米)、4位中国移動(チャイナモバイル)、5位中国工商銀行とベスト5のうち3社までが中国・香港勢によって占められていた。日本勢はトヨタ自動車の21位が最高である。

第269回 仰木彬氏に続く“パ・リーグ2代目広報部長”となった梨田昌孝監督

 北海道日本ハムの梨田昌孝監督が高校生ドラフト1巡目の大物ルーキー中田翔について「交流戦では甲子園の時のようにマウンドに上げるかもしれない」と仰天プランをブチ上げた。  高校(大阪桐蔭)時代、通算87本のホームランを記録した中田だが、投げても最速151キロのスピード自慢。梨田監督がピッチャーとしての魅力を捨てきれないのもわからないではない。

第315回 土俵を制するのは王者か覇者か

「王道」か「覇道」か――。東西両横綱の相星決戦となった初場所の千秋楽をテレビで観ていて、不意にそんなフレーズが脳裡をよぎった。  言うまでもなく「王道」は3場所連続優勝を果たした東の横綱・白鵬である。伝家の宝刀・左上手投げで西の横綱・朝青龍をひっくり返した瞬間、隣で観ていた知人が「正義が勝った!」と言って手を叩いて立ち上がった。何が正義で何が邪悪なのかは不明だが、一連の騒動を通じて知人は朝青龍に対し、嫌悪に近い感情を抱いたようだ。

第268回 最初から野手として勝負させるべきだ 北海道日本ハム・中田翔

 プロ野球における「二刀流」は口で言うほど簡単ではない。ピッチャーかバッター、どちらか一本にしぼるべきだろう。  北海道日本ハムの梨田昌孝監督が、高校生ドラフト1巡目の大物ルーキー・中田翔について「交流戦では甲子園の時のようにマウンドに上げるかもしれない」と仰天プランをブチ上げた。

プロ野球の速球王、前人未踏の160キロへの挑戦 ヤクルトスワローズ・五十嵐亮太<後編>

 高校3年夏の千葉県大会1回戦、五十嵐は稲毛高を前に12奪三振の完封劇を演じた。この試合の2回、彼は自己最高の144キロを記録した。ヒットこそ4本許したものの、打球はいずれも球威に押されて詰まっていた。  ネット裏には10球団、13人のスカウトが集結していた。当時のスポーツ紙にはスカウトの次のようなコメントが紹介されている。 「腕の振りの速さは天性のもの。真っすぐが速いのが魅力だね」(日本ハム・田中スカウト)、「球の離し方とヒジの使い方がうまいから手元でボールが伸びる」(広島・苑田スカウト)。

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