甦ったトス 〜竹下佳江〜<後編>

 一柳はJTを率いて6年目のシーズンを迎えようとしていた。自らもセッター出身ということもあり、早くから竹下の能力に目をつけていた。  また当時のJTにはセッターが西堀育実だけしかおらず、Vリーグに昇格するためには竹下の能力とキャリアが必要だと考えていた。

第334回 もう「フンドシ」の時代には戻れない

 米国においてモータリゼーションが始まったのは20世紀初頭である。これにより市民生活の向上や産業振興がはかられたが、当初から将来の環境汚染や広域犯罪の発生、事故の多発を懸念する声が相次いでいた。実際、そうした懸念のほとんどが現実のものとなった。しかし、だからといって再び馬車の時代には戻れない。歴史上、人類が手に入れた最先端の科学技術を手放したことは一度もない。

第287回 片鱗は見えるが……制球力を磨き「大器」へ 東北楽天・片山博視

 どんなピッチャーなのか気になっていた。甲子園で投げていた姿はかすかに覚えている。キャンプでのピッチングもチラリと見た。  しかしプロに入ってからは泣かず飛ばず。192センチの長身。「未完の大器」と呼べば聞こえはいいが、そう呼ばれたピッチャーのほとんどが「未完」のままで終わっている。

第333回 「FWはロマンチスト…」思い出深い長沼語録

 いつも毅然としておられた。しかし、その振る舞いは決して居丈高ではなかった。古武士のような人だった。しかし頑迷固陋ではなかった。  手許に1冊のノートがある。表紙には「長沼健メモ」。2日に死去したサッカー協会最高顧問・長沼健氏とのやりとりが綴られている。語録の一部を紹介しよう。

第332回 三宅義行、娘に救われた人生

 メキシコ五輪重量挙げフェザー級銅メダリスト三宅義行が噴門(食道から胃への入り口)にできた潰瘍を切除したのは32歳の時だ。「(メキシコで)銅メダルを獲った以上、あとは金しかない。兄(義信)は金を2つ(東京とメキシコ)も獲ってる」。バーベルの重量以上のプレッシャーが三宅の双肩にのしかかった。「もっと練習を積みたいのにケガもあって思うような練習ができない。そうしたストレスが原因で胃に激しい痛みが走るようになったんです。手術に踏み切る前の3年間は痛みで眠れない日々が続きました」

第284回 阪神、中日が強い本当の理由

 予想どおりと言えば予想どおりだが、セ・リーグでは阪神と中日の2強の力が抜きん出ている。  5月13日現在、阪神が24勝12敗1分けで首位、中日が21勝14敗3分けで2位。以下、東京ヤクルト、巨人、広島、横浜と続くが、3位以下はいずれも勝率5割を切っている。“2強4弱”の様相だ。

第283回 星野監督との「ホットライン」に注目! 北京五輪野球日本代表 山本浩二コーチ

 昨年12月に行われた野球の北京五輪アジア地区予選におけるハイライトシーンといえば、台湾戦でのサブロー(千葉ロッテ)のスクイズバントだろう。  7回表無死満塁の場面。日本は6回裏、台湾の主砲・陳金鋒に逆転2ランを許し、1対2と1点ビハインドを背負っていた。

先駆者の流儀 松下浩二

 プロ卓球選手。  日本でたったひとりの肩書きである。  正式に言えばレジスタード・プロプレーヤー(認定プロ選手)。日本卓球協会が86年に競技者規定を設けて以来、初めてその適用を受けた。「日本では自分ひとりしかいないでしょう。だから使命感はありますよ。いい成績を残し、賞金を稼がなければ、後に続く人が出てこなくなる。卓球のステータスを上げるためにも、自分が頑張らなければいけない」  きりっとした口調で、松下浩二は言った。

第282回 新コミッショナーに望みたい“ボールの番人”の威信回復

 プロ野球に下田武三氏(故人)以来2人目の外交官出身のコミッショナーが誕生する。前駐米大使の加藤良三氏だ。  加藤氏は2006年、日本が初代王者となったWBCの2次リーグ、日本対米国戦で始球式を務めたほどの野球通。メジャーリーグに対する知識も豊富で国際的な問題が山積する今のNPB(日本プロ野球組織)コミッショナーにはうってつけの人物と言えるだろう。

第328回 時代に逆行する“最高峰に聖火”

「当日は大雨だったこともあり、走り終わると選手たちのストッキングが真っ黒に汚れていました。これは目に見えないものですから、具体的にどの程度かは分かりませんが、日本よりも空気が悪いのは間違いありませんね。ただ本番でマスクして走るわけにもいかないし…。ぜんそくなど呼吸器に疾患を持つ選手にとっては厳しい環境でしょうね」。中国電力の坂口泰監督の感想だ。

苦境と栄光 内柴正人

 お家芸と呼ばれる柔道にあって、鬼門と呼ばれるクラスが男子66キロ級だった。  旧65キロ級時代含め、世界の層が厚いこのクラスで、日本人が五輪で金メダルを獲得したのは‘84年ロサンゼルス大会の細川伸二まで遡らなければならない。  一階級下の60キロ級には今回のアテネで五輪3連覇を達成した野村忠宏がいる。その野村に比べれば、内柴正人の世界での実績は、いささか心許ないものがあった。

第327回 高地規制がサッカーの魅力を奪う

 確かに医学的な見地に立てば、そういう判断になるのかもしれない。しかし危険だからという理由で規制を設けるのは、むしろサッカーの未来を考える上でマイナスになるのではないか。ボールひとつあれば、地球上のどこでも誰とでも楽しめるのが、このスポーツの最大の魅力ではなかったのか。

第280回 長距離砲が花開く…新生レオの「若年寄」 埼玉西武 G・G佐藤

 顔が老けて見えるので「ジジィ」、登録名はそれをもじって「G・G・佐藤」。  さる4月8日、本拠地の西武ドームで大仕事をやってのけた。対千葉ロッテ戦、9回裏2死一塁、2対3と1点ビハインドの場面で打席に入ったG・Gは、ライトスタンドに自身初のサヨナラ2ランを叩き込んだのだ。 「マジうれしいです。言っていいですか? キモティー!」  ちなみに「キモティー」は「気持ちいい」。今ではすっかり西武ドームの人気者だ。

第326回 「骨抜き」相撲協会に行政指導を

 大相撲の決まり手に、新たに「骨抜き」なる技が加わろうとしている。  時津風部屋の力士死亡事件を受けて昨年10月に発足した「再発防止検討委員会」は14日、全53部屋の視察を終えた。日本相撲協会は同委員会の名称のみを変更して、そのまま存続させる方針のようだが、おいおい、大事なことを忘れてもらっては困る。文部科学省の松浪健四郎副大臣が協会に要求した「外部からの理事登用」はいったい、どうなったのか。

巨人・松井秀喜の、“進化する怪物”<後編>

 そして今年、最も変わったと思われる点はレベルスイングの時間が長くなったということである。ダウンスイングでボールをとらえにいき、レベルの部分でボールに力を伝え、最後、アッパースイングでボールを運び去る――これがバッティングの基本だが、今の松井はこのレベルスイングでの時間が際立って長く感じられるのである。

第325回 「偶然だぞ」の文字に感じた温もり

 不適切とまでは言わないが、言葉に温もりが感じられない。「後期高齢者医療制度」と聞けば、該当する75歳以上の高齢者は誰だって「年寄り扱いするな」「オレたちは臨終間近ということか」と腹を立てるだろう。  世間の反応の悪さを察知した政府は慌てて「長寿医療制度」と呼称を改めたが、いかにもとって付けたようで不評を覆したとは言い難い。

第278回 指揮官の“迷采配”に面食らったのでは? 広島・ブラウン監督

 まるで“抱き合い心中”を見ているようだった。  これを采配ミスと言わずして、いったい何を采配ミスと呼べばいいのか。  3月30日の中日戦で広島のマーティ・ブラウン監督が披露したのは、敵地のファンがどよめきをあげるほど不可解なものだった。

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