西武・秋山翔吾、安打数日本記録への挑戦

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 そのバットは、まるで打ち出の小槌だ。
 西武の秋山翔吾が開幕からヒットを量産している。7月2日現在、76試合で126安打。このままのペースで打ち続けると143試合では237安打となり、マット・マートン(阪神)が持つシーズン最多安打記録(214本)を大幅に塗り替える。打率も.383で福岡ソフトバンク・柳田悠岐と激しい首位打者争いを展開中だ。こちらもランディ・バース(元阪神)が記録した最高打率.389を更新する期待が持てる。昨季は123安打、打率.259だったレオのトップバッターはなぜ覚醒したのか。二宮清純が本人に直撃した。
(写真:3日の千葉ロッテ戦でも快音を響かせ、球団新記録の24試合連続安打を達成した)
二宮: 今季は素晴らしい活躍ですね。200安打も十分、狙えるのでは?
秋山: いや、まだ僕の中ではちょっと現実味がないんです。ここまでいいペース、いい状態では来ているので、残り試合も丁寧に行きたいとは思っています。

二宮: 1試合2安打、3安打と固め打ちも多い。打順がトップに定着したことでメンタル面での安定も好影響を与えているのでしょうか。
秋山: やはり、オープン戦からずっと打順の固定をしてもらって、役割が明確になったところは大きいですね。2番には栗山(巧)さんがいらして、その後ろもあれだけの長距離ヒッターが揃っている。とにかく出塁することを考えればいいので、すごく楽に打席に入れていると感じます。

二宮: 1番という打順も合っているのでしょうか。
秋山: そうですね。どの打順もやることは変わらないと思っていますが、1番は必ず1打席目はピッチャーとの勝負で始まる。1番以外は流れや展開に応じて変わってくるので、そのあたりはだいぶ違いますね。

二宮: 田辺徳雄監督からの指示は?
秋山: 特に直接、話はされていないですね。ただ、監督はずっと僕を1番に置いていただいている。監督として求める役割を示してくれているのかなと自分なりに思っています。

二宮: このペースでヒットを連ねると、200安打はもちろん、パ・リーグ記録の210安打(イチロー=当時オリックス)や、プロ野球記録の214安打を上回る計算になります。
秋山: どうでしょう(笑)。まだ、ここまで半分ですからね。イチローさんの場合は130試合で残した記録なので、もう比較にならないと感じています。

二宮: 昨季、右バッターの安打数日本記録を塗り替えた東京ヤクルトの山田哲人選手は「1週間で7本」を目標にヒット数を積み重ねていったと聞きました。そういった具体的な数字は設定しているのでしょうか。
秋山: 今年は意識していますね。1番として「1日1本」が、ひとつのモチベーションになっています。打率はあまり考えたくありませんが、1週間でどれだけ打てば3割をキープできるかも、少し計算しながらやっていますね。

二宮: 今季の打球方向を見ると広角に打ち分けられていますね。
秋山: 今年は基本的に逆方向に打つことを考えながらやっています。僕はこれまで、どちらかと言えば引っ張ってのヒットが多かった。でも、打率の高いバッターは逆方向にしっかり打てる。右の内川聖一さん(ソフトバンク)や、左の銀次さん(東北楽天)、中村晃(ソフトバンク)……。逆方向に打てる選手が打率も3割以上をマークできるととらえています。

二宮: その関係か、一般的には不利と言われる左ピッチャーに対して、なんと打率.413です。
秋山: 今年は、ずっと試合に出していただいてるんで、何回も対戦するピッチャーが増えてくる。それで左ピッチャーでも打てているんだと感じます。

二宮: カウント別にみても、1−2、2−2とピッチャー優位の状況でも3割以上。こちらもすごい成績です。
秋山: 1番を任されていることもあり、追い込まれてからは、「もうファールでいい」と思いながら打席に入っています。追い込まれたということは、それまでに勝負し切れなかったわけですから、「ファールで、もう何球か投げさせたらいいな」と考えているんです。たとえアウトになっても、次の打席や、次の対戦カードに向けて球筋やタイミング、変化を確認できればいい。とにかくバットに当てることを意識しているので、それが結果として詰まったヒットになったり、いい方向に転がっているのではないでしょうか。

二宮: 秋山さんの働きもあって、チームも優勝争いを演じています。まだ秋山さん自身はリーグ優勝の経験はないだけに、今季はチャンスですね。
秋山: ゲーム差も、そんなに難れていないですし、戦い次第では追いつけるところにいる。勝利に対するモチベーションが強いことも、いい結果につながっていると感じますね。

<現在発売中の講談社『週刊現代』(7月11日号)では秋山選手のインタビュー記事が掲載されています。こちらも併せてお楽しみください>
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