仙台大・井上七海「会場の声援がエネルギー」 ~全日本学生柔道優勝大会~

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 大学の団体日本一を決める「全日本学生柔道優勝大会」(全日本学生優勝大会)が6月22日からの2日間、東京・日本武道館で開催される。注目するのは、昨年の女子1部(5人制)で東北勢初のベスト4進出という快進撃を見せた仙台大学だ。1年生ながら4試合中3試合で中堅を任された井上七海に話を聞いた。

――昨年の全日本学生優勝大会に初めて出場されました。大会を振り返って、いかがでしたか?

井上七海: ベスト4に入った手応えと、準決勝で負けて“もっと上にいきたかった”という悔しさの両方の気持ちがあります。この優勝大会で上位に入れたことが自信になりました。私自身、緊張はしたんですが、メンバーに選んでもらったからには、その責任を果たしたかった。先輩たちが自分の緊張をほぐしてくれたので、みんなで掴み取ったベスト4だったと思っています。

 

――大会中、井上選手の笑顔が目立ちました。

井上: 1試合1試合がすごく楽しかった。普通は試合の1週間前から徐々に緊張感が高まっていくものですが、昨年の仙台大の雰囲気は厳しい稽古の後でも笑顔が多く、“ここまでやってきたことを出すだけだから!”と明るかったんです。先輩たちが楽しい雰囲気をつくってくれたおかげで、すごく居心地が良かった。周りに気を遣わずに戦うことができました。

 

――全日本優勝大会の女子1部は先鋒、次鋒、中堅、副将、大将の順に戦い、多くの得点(勝ち1点、引き分け0点)を獲得したチームが勝ち上がりとなります。先鋒、次鋒が57kg以下、中堅・副将が70kg以下、大将が無差別と規定で定められています。70kg級の井上選手は昨年、中堅として3試合に出場し、いずれも上級生と対戦しました。

井上: まずは1点を取られないことを意識しました。昨年は自分の力を出すだけでしたが、今年は自分が1点を取らないといけないと思っています。国士舘大学との準決勝では、山口葵良梨さん(当時4年)に指導3つによる反則負けで1点を取られました。チームは1対1ながら内容差で敗れた。団体戦での1点の重みを知りました。1試合4分。この時間でどれだけ勝ちにこだわれるか。一本や技あり、有効でポイントを取るのが難しい場合、時には相手の指導を誘うような柔道も必要だと痛感しました。

 

――大会後の全日本ジュニア柔道体重別選手権大会と全日本学生柔道体重別選手権大会で3位入賞を果たしました。

井上: うれしさも悔しさもある濃い1年でした。昨年は優勝大会の勢いに乗って個人戦に臨むことができました。どちらの大会も1試合1試合きつくて、それを乗り越えて準決勝に進めたことはうれしかった。でも満足してはいけないと思っています。

 

――自分に満足しないタイプですか?

井上: 理想の柔道に近付けるまでは満足できないと思います。高校生の時までは投げて勝つという思いが強かったのですが、今はどうやって勝つかを考えられるようになってきました。一本を取って勝つのが理想ですが、やはり勝たなければいけない。(南條)和恵先生には「投げにこだわり過ぎていては、特に団体戦では難しい。引き分けを狙ってくる選手もいるから考えて戦わないといけないよ」と教わりました。

 

人間として成長できる場所

――ところで仙台大の進学を決めたきっかけは?

井上: 仙台大の稽古に参加し、和恵先生と話してパッと決めました。“この先生と日本一を目指したい!”と思ったんです。和恵先生は「日本一を目指そう!」「世界に出られるように頑張ろう!」と私の可能性を信じてくれました。前向きな言葉を掛けていただいたのが大きかった。

 

――練習に参加してみて感じたチームの雰囲気は?

井上: すごく良かったです。仙台大は上級生が掃除を率先して行うのが特徴です。上下関係が厳しくなく、すごく仲が良いんです。だから試合でも1人で戦っている感覚がない。全員で戦っている雰囲気なので心強く感じます。

 

――仙台大の魅力とは?

井上: 妥協しない稽古をします。もちろんきついですが、先輩たちがポジティブな声を掛けてくれる。きついけど頑張れる。1人の人間として、すごく成長できる場所だと思っています。

 

――厳しい稽古を経て、昨年と比べて力がついてきた実感はありますか?

井上: もちろんです。この1年で練習メニューの質も上がりました。毎日稽古を見て下さる先生方がいろいろなことに挑戦させてくれています。その先生方の期待に応えたい。今年はぜひ全日本学生優勝大会で優勝を目指したいです。

 

――個人としてのこの1年の目標は?

井上: 去年3位だった全日本ジュニアで優勝して、世界ジュニア柔道選手権大会に出場したいと思っています。

 

――自身の強みは?

井上: 今は投げられないことですね。この1年のトレーニングの成果で、下半身が鍛えられ、それによって身体が強くなりました。元々は内股が得意だと思っていましたが、身体が強くなったことで背負い投げにいったり、寝技だったりと技の選択肢が増えた気がします。

 

――最後に将来の目標を。

井上: 世界で活躍する選手になりたい。そして、いろいろな人から応援される選手になることが目標です。どの大会に出ても、私は応援から力をもらっています。今の自分があるのも、これまで関わってきてくださった方たちのおかげ。“その恩返しのために頑張るぞ、という気持ちが日々のエネルギーとなっています。

 

井上七海(いのうえ・ななみ)プロフィール>

2004年9月17日、島根県生まれ。仙台大学2年。70kg級。小学1年時に兄の影響で柔道を始める。松江市⽴第⼆中学、明誠高校を経て、2023年に仙台大学に進学した。明誠高校3年時に全国高校総合体育大会(インターハイ)でベスト8入り。仙台大では1年生ながら全日本学生柔道優勝大会で中堅として4試合中3試合に出場、同大初のベスト4入りに貢献した。個人戦では全日本ジュニア柔道体重別選手権大会と全日本学生柔道体重別選手権大会で3位入賞を果たした。身長167cm。得意技は内股。オフのリフレッシュ方法は温泉と、おいしいものを食べること。

 

(取材・構成/杉浦泰介、競技写真/大木雄貴、その他の写真/本人提供)

 

BS11では「全日本学生柔道優勝大会」の模様を6月23日(日)18時から放送します。男子は16年ぶり7回目の優勝を果たし、連覇がかかる国士舘大と、王座奪還に燃える東海大を中心とした優勝争いが予想されます。女子1部は連覇を狙う環太平洋大に加え、東海大、龍谷大といった強豪校、今回特集した井上七海選手が所属する仙台大にも注目です! オンエアをお楽しみに!

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