Karim(LIFULL ALT-RHYTHM/徳島県徳島市出身)第2回「ダンスと出会う必然」

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 D.LEAGUEのLIFULL ALT-RHYTHM(ライフル アルトリズム)に所属するKarimこと荒岡カリムは2001年5月14日、徳島県徳島市で生まれ育った。モロッコ人の父、日本人の母との間に生まれた男の子は「心の広い人」という意味を持つアラビア語の男性名、カリムと名付けられた。

 

 

 母・史恵の述懐――。

「いたずら好きでユーモアのある子でしたが、特段活発でもなければ大人しいというわけでもなく、普通の子でした。ただ好奇心旺盛で年齢や性別、人種問わず誰とでも仲良くなれるところはありましたね」

 

 その“普通の子”がダンスに出会ったのはなぜか――。母・史恵によれば「お父さんのモロッコの実家に帰ると、音楽をかけて家中のみんなが踊っていることがよくあったんです」という。「私自身はミュージカルなどが好きで、カリムが3歳になってからは演劇やミュージカル、バレエによく連れて行きました。小さい時でも集中を切らすことなく最初から最後まで釘付けになって観ていたのを覚えています」

 

 幼少期から音楽、芸術、ダンスに触れてきたカリムからすれば、6歳で家から徒歩圏内にあるスポーツセンターで開催されるダンス教室に通い始めたのは必然だったと言えよう。カリム少年はすぐダンスの虜になったという。習い事は水泳やサッカーなどもやったが、「気が付けばダンスだけが残っとった」と本人。「身体を動かすことが好きで、踊ることが大好き。絵を描くことも含め、自分を表現することが好きです」

 

 その点は母・史恵も認めるところだ。

「ダンスをすることや人前で踊ることはカリムにとって特別じゃない。むしろ自分を表現するためのツールだったんだと思います」

 

 小学生になってからはダンススタジオに『BOUND BOX』(バウンドボックス)に通い始めた。踊る場所はダンススタジオに限らなかった。

「地元の商店街にガラス張りのドアを鏡代わりにして、ダンサーが練習する場所があるんです。そこで自分も毎日練習していました」

 

 世界へのステップ

 

 

 ダンスに明け暮れるカリム少年には、悩みの種があった。徳島県のダンス人口はそれほど多くなく、県内に同世代のダンサー仲間、ライバルが少なかったことだ。

「一緒に踊り合って、高め合っていく地元の同世代の仲間が少なかったというのが苦しかったです。今思うと、ダンスを踊って生きていきたいというぼんやりとした理想に一緒に向かっていく仲間が欲しかったのかもしれません」

 

 だから県外に飛び出していくことを厭わなかった。

「大阪、東京などいろいろなダンスシーンに飛び込んでいきました。大阪は毎月、多い時は毎週通っていました。とにかく、様々な環境でたくさんの人たちと踊ってきたことが今の自分に生きている気がします」

 未知の場所へも迷わずステップを踏み出した。

 

 旅をしているような気分もあったのかもしれない。だが、それ以上にワクワクやドキドキが待っている場所に対し、じっとしていられない性分だった。本人は「徳島と県外、ふたつの世界を行き来しているような感覚がありました」と当時を楽しそうに振り返る。

 

 カリム少年が中学2年生になろうかという頃、家族に「ダンスで生きていきたい」と告げたという。まだダンスバトルに参加し始める前の頃だ。家族に心配がなかったと言ったら嘘になるが、「カリムなら大丈夫」と最終的には彼の背中を押した。

 

「どんなダンサーになりたいか、当時は明確でなく、不安もありました。ただ踊っているうちにどんなダンサーになりたいか、ぼんやりと理想像が見えてきた気がします」

 カリム少年は重心をダンスに置き始めてすぐ、ダンスバトルで結果を残した。中学3年時の秋、大阪で行われた「DANCE@LIVE 2017 KIDS KANSAIvol.2」(開催は16年秋)では、同世代で既に世界大会で結果を残していた猛者たちにも勝利するなど、準優勝を果たしたのだ。

 

「ダンスで生きる」と決めた少年は、その後もダンスバトルでスキルや表現力を磨いていく。そして世界へ飛び出していくのであった。

 

(第3回につづく) 

>>第1回はこちら

 

Karim(かりむ)プロフィール>2001年5月14日、徳島県徳島市出身。本名は荒岡カリム。6歳でダンスを始め、11歳からストリートダンスを学ぶ。のちにダンスバトルの魅力に惹かれ、国内外の大会で結果を残した。2017年には、高校チャンピオンに輝き、同年KOD ASIA CUPで予選を勝ち抜き世界大会に出場した。21-22シーズンからD.LEAGUEに参戦。dip BATTLES(21-22)、LIFULL ALT-RHYTHM(22−23)と2季連続でチャンピオンシップを経験した。HIPHOPを得意とするダンサー。身長173cm。 

 

(文・写真/杉浦泰介)

 

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